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カリカリ…… カリカリカリ…… 

妙な音であった


日が変わって間もない時間である

深い眠りに入る前であったこともあり

私の父はその音を聴いて


ふっ


と、目を覚ました


カリカリ…… カリカリカリ…… 


やはり、妙な音がする
一体、なんの音なのか

弱々しく
たどたどしく
しかしはっきりとその音は聞こえてくるのである


父は音がする方を見た

いや、見ようとした

しかし、明かりひとつない部屋の中をいくら見渡そうとしたところで
当然、ほとんどなにも見えはしない

それでも、父は眼鏡をかけ、音のする方を見ようとしたのである
上体を起こし
月明かりを頼りに
闇に慣れた目をようく凝らし


そして、父は後悔した





起き上がって正面

部屋の出入り口のそばに


黒い人影が立っていた


そして、その人影が


カリカリ…… カリカリカリ…… 

壁を力なく引っ掻いているのである


「お、おい……!」

そう声に出そうとした時であった
隣で眠っている私の母を起こそうとした時であった


父の手は母に触れることなく

敷布団を押した



瞬間、父はすべてを理解した

そして、戦慄した




そこに立っているのは

母であった



母が、暗い部屋の中

明かりもつけないで壁を引っ掻いていたのであった



「なにを、しとん……?」



おそるおそる
父はそう言った


すると


ぐ、
る、
う、
り、


と母は
振り返り


虚ろな目で父を睨んだ



いや
父ではない


どこを見ているのか分からないような目で
しかし、父の後ろにある何かを睨んでいた



じわり……


と、浮き上がった嫌な汗が
全身をじっとりと覆い


つう……


と、頬から顎に伝わった汗が
ぽたりと落ちた



どれほどの時が流れたのだろうか

数秒が数分に

数分が数時間にさえ感じられるような

あまりにも重苦しく
あまりにもおぞましい時間が

二人の間を

ずるり……

ずるり……

と、通り過ぎて行ったのである




と、父よりも
あるいは時間よりも先に

母が動いた


ゆっくりと

音もなく

ゆらありと

力なく


布団の前まで行き
糸が切れたかのように
倒れた









と言うようなことが
昨日あったらしい


正確には今日の1時半ごろか

そんなことがあった後
大体、二三十分後に
母は何事もなかったかのようにトイレに行って戻ったらしい

ちなみにその時のことは全く覚えてなくて
自分がトイレに行ったことだけは覚えているのだとか

「あんたぁ、なんも覚えとらんのか!」
「わしゃちびるかと思っとったわ!」
父は笑い話でもするかのように
面白おかしく話してくれたけど


たぶんその時、
母が見ていたのは父の守護霊だと思う


……守護霊だなんて
書きながら恥ずかしくなるような
ずいぶんと懐かしい言葉だな


あと
もちろんのことだけど
ある程度は脚色してある
脚色はしてあるんだけど
ほとんど脚色するところがないぐらいに話の内容がしっかりしてたから
実に書きやすかった

眼鏡をかけたのかどうか
汗を流したのかどうか
全身に脂汗がにじみ出たのかどうか

それは知らない

この三点は私の後付けです



ちなみに同時刻
私は無双してました
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