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今は遠き夏の日々 ~学校七不思議編 その七~

 壁の噂
 
 七月十六日、水曜日。
「ねえ、こんな話知ってる?」
 真夏の放課後に、教室に残って怪談話大会を主催した香苗は、次の話に耳を傾けた。
「何年か前に、実際にあった事件の話なんだけどね? 稲穂坂で、ある女の人の死体が発見されたの。稲穂坂の、中心からちょっと西にそれた、ほら、タリーズのある通り」
 と、自分の番が回った少女は、他の女子たちに負けじと雰囲気を出して語った。
「死んだそのOLさん。なんでも、生まれも育ちも成上市らしいんだけど、生まれてから一度も成上から出たことがなかったらしいの……。……なんでだと思う?」
 それは、集まった女子たちの中では、声の使い方が最もうまい語りであった。
 ――同日。
「あっ。イチジョウさん。こっちこっち」
 待ち合わせ場所である成上駅前に到着した小夜子は、声をかけられて振り返った。
 この日、小夜子は夕美や、あるいは香苗とも違う、隣のクラスの女子と遊ぶ約束をしていた。小夜子にしては、非常に珍しいことであると言える。もちろん、それは小夜子に関する噂もあって、そもそも近づこうとする人間がほとんどいないこともあるのだが、それ以上に、小夜子自身が非常に人付き合いの下手な人間だからに他ならない。
 そもそも、香苗との関係でさえ、隣に夕美がいなければ近づきもしなかったほどなのである。自分から知り合いになろうとしなければ、どこかで一歩、後ろに下がり、そして壁を作ってしまう性格が、小夜子は昔から直っていなかった。
 そういったこともあって、タナベという、全く面識のなかった隣のクラスの女子と遊びに出かけることに、小夜子はずいぶんと抵抗を感じていた。そのため、今回のことを夕美にも相談していたのである。ところが、夕美は夕美で「人見知りを直すいい機会じゃないか」と、緊張する小夜子とは逆に前向きであった。
 夕美の言うことも、一理あるだろう。小夜子はそう自分に言い聞かせながら、こうして待ち合わせの場所にやってきたのであった。
「それで、タナベさん。今日はどこ行くの?」
「ちょっと待っててください。まだ人が来ますから」
「……え? 誰か来るの?」
 言われた瞬間、小夜子はひどく狼狽した。確かに、タナベは二人で遊ぼうとは言っていなかった。しかし、小夜子にとって、人数が増えれば増えるほど、緊張する上に、気が滅入ることになる。下手をすれば、吹奏楽部から逃げた時と同じことになりかねなかった。
 と、すぐにタナベの知り合いらしき四人組が現れた。
「おおっ! ホントにあのコじゃん!」
「マジかよ! やるな、オマエら」
 短髪で少々柄の悪い男と、長めの茶髪が特徴的な整った顔立ちの男が、大きな声を出で笑った。そして、見るからに品のなさそうな女二人が、言われてにたにたと笑った。
「おいタナベー。アンタもやればできるじゃんー」
 ぐい、とタナベの肩を引き、女の一人が下衆な笑みを浮かべながら言った。
 この光景を前にして、さすがに小夜子も、おかしい、と気がついた。
 ――

「その人にはね? どうしても成上市から出られない理由があったの。それが『壁』よ」
「……壁? ってどういうこと?」
「見えない『壁』だよ。死んだOLは、透明で、見えない、コンクリートよりもずっと固い『壁』に阻まれて、成上市から外に出ることができなかったの」
 そう言えば高橋葉介先生の漫画にそんな話があったなと、香苗は聞きながら思った。
「死んだその人は、生まれてから一度も成上の外に出たことがなかったからなのか、見えない『壁』を、特別不便に思ったことはなかったらしいよ。まあ、旅行に行ったりとかはできなかっただろうけどね。それでも、それなりに普通の暮らしをしてたそうよ」
 一息ついて、語り部の少女は続けた。
「ちょうど、その人が死んだのと同じ年に、不良グループの女性拉致事件が問題になっていたらしくってね。ほら、みんなも覚えてない? 小学校の、低学年の頃に、妙に集団登下校が厳しくなった時期があったでしょ? あの頃だよ」

 ――
 隙を見て、逃げてしまおう。
 明らかによくない状況の中で、小夜子はそう判断した。
 だが、逃げるのならば、四人組が現れた時点でそうしたほうが、懸命であった。
「よしっ! こっからは、コレで移動しようゼ」
「えっ……? あ、あの。一体、どこに行んですか?」
 小夜子は足を止めた。そして、短髪の男が指差した車を見て、息を飲んだ。
「まあまあ。行けば分かるよ」
 と、茶髪の男がぐいと肩を引いてきた。
「行けば分かるって……。待ってください。どこに行くのか知らないですけど、移動するなら、バスとかにしましょうよ。それか、この辺りの、徒歩で行ける場所とか――」
「車があるのになんでわざわざそんな面倒なことしないといけないの?」
 そう言って、品のない女二人が小夜子の背中を押した。逃げ道も男二人が完全に塞いでおり、小夜子は最後まで抵抗したが、ワゴン型のこの黒い車に押し込められてしまった。
 車に乗せられた後、女二人は小夜子の両隣に座った。そして、小夜子の世話でもするかのように、すぐさまシートベルトを小夜子の腰に巻いた。
「ほらほら。安全のために、ちゃんとつけて」
 安全のために? 逃がさないためにの間違いでは?
 頭の中ではそう叫びながらも、さすがに悪態をつけるほど、小夜子に余裕はなかった。
 
 ――

「死んだOLは、その日、本当にいつも通りの一日を過ごしていたんだって。いつもの時間に出社して、いつものように仕事をこなして、いつもの時間に会社から帰る。ただ一つだけ、いつもと違うことがあった。――ここまで言えば、もう分かるでしょ?」
「不良グループに連れ去られたの?」
「問題はそこじゃなかったの。……もちろん、それ自体も問題だったけど。……その人にとっての、一番の問題は不良たちの行先だったの」
「……」
「不良たちの行先は、稲穂坂のさらに先。今もあるでしょ。ほら、あの、人が近づかない廃ビル。それは、その人にとって『壁』の向こう側だったの。……最初の話に戻ると、稲穂坂の、タリーズのある通りで発見された、OLの死体。どんな死体だったと思う?」
「……どんなの?」
 ごくり、と一同が、唾と、息と、両方を飲み込んだ。

 ――
 小夜子は気が気でなかった。一体どこへ、どういう道を通って向かっているのか。乗り物に乗っているというだけでも手に汗を握るというのに、運転している短髪の男に、助手席の茶髪の男、そして両隣にいる品のない女二人の、全員が行先を言わないのである。
 いや、それだけではない。小夜子はちらと速度計測器を覗いた。
「あの……。もっとゆっくり走ってくれないですか?」
「ああ? 何で? 早く着いた方がいいだろ?」
 茶髪の男が振り返って答えたのだが、いつ見ても、制限速度が五十キロの道路を七十、八十近くで飛ばしているのである。次第に小夜子の心拍数が上がっていき、のみならず、動悸が激しくなるにつれて呼吸も荒くなっていっていた。
 と、小夜子は焦りながらも、車内から見える景色から、およその現在位置を確認した。
 巨大なボウリングピン、越の字が書かれた大型デパート、銀行、郵便局。
 この場所は、商業地区の南端に近い場所だ……!
 このまま行くと、このままの速度で車があの地点まで行ってしまうと……!
 明確な死のイメージが、小夜子の眼前に広がった。
「すいません! ちょっと一回、車とめてください!」
「大丈夫だって。別になにも変なところに連れてこうってんじゃないんだから」
 既に緊張は臨界点を越えており、小夜子はほとんど正常な判断ができなくなっていた。
「そうじゃなくて! お願いですから、車をとめて!」
 小夜子は必死であった。両隣の二人をのけて、走行中であろうともはや関係なく車の扉を開いて外に飛び出したかった。いや、そうせざるを得なかった。そうした小夜子の行動をはたから見れば、パニックになっているか、ヒスを起こしたかと疑うことであろう。
「ちょっと、コイツ大丈夫なの?」
「おい、運転に集中できねえよ。黙らせらんねえ?」
 ふっ……。と、窓の外で、見覚えのある喫茶店が流れるのを、小夜子は見た。
 瞬間、小夜子は戦慄した。さあと血の気が引いたばかりか、悲鳴を上げることも、呼吸をすることさえも忘れ、一切の思考能力が停止した。
 視界いっぱいに広がる白い世界に、小夜子は死を覚悟した。
 ――

「現場には、ワゴン車のバックドアだけが残されていたらしくてね」
 バックドアだけ? と一人が聞き返すと、彼女はこくりと頷いた。
「彼女は車で連れ去られたわけなんだけど、死体のあった現場には、道路の真ん中に、へしゃげたバックドアが一つ。……OLの死体は、その上にあったらしい。じゃあどういう風に死んだかっていうと、もちろん、バックドアで撲殺されたなんてことはない」
「……」
「女性を拉致してレイプしようとした不良たちは、そのOLの事なんて知らない。見えない『壁』に阻まれて成上市から出られない事なんて、知るわけがなかった。だからその不良たちも、いつもやるように時速七、八十キロ出して目的の場所に行こうとした」
「……」
「その人はね……。八十キロのスピードで『壁』に衝突したの……。だけど、衝突したのはあくまでその女性だけ……。車は止まらずそのまま走り続けようとした」
「……」
「女性は『壁』と車のバックドアに押しつぶされ、車の勢いに耐えきれなかったバックドアは外れて……。だから、現場にはへしゃげたドアと、潰れて肉の塊みたいになった女性の死体だけが、残っていたらしい……」
 しん……。と、教室内が静まり返った。校庭で練習に励む陸上部の声や、蝉の声が実によく聞こえるようになったのだが、その場にいた全員の耳に、その音は入らなかった。
「……っていう話なんだけど。どうかな?」
「なんていうか……。無駄にリアルだから余計怖いんだけど」
「その見えない『壁』って。もし私たちにも触れるようになったら恐いよね」
「ちょっと! やめてよカナエ! それで電車乗ってごらんよ! 即死じゃん!」
「まあ、謎の変死から誰かがそうなんじゃないかって予測した、ただの噂だけどね」

 ――
 ……いーん……。
 耳鳴りがしていた。他には何も聞こえず、視界もほとんど白いままであった。
「……。……。……ぐう。……」
 呼吸をしようとしても、僅かに息を吸うことが精いっぱいで、少しでも楽な姿勢を取ろうと体を動かすと、それだけで激痛が腹部に走る。悲鳴はおろか、助けを呼ぶことさえできず、脳に送られ続ける痛みの信号に、ただ耐えることしかできず、涙が流れ続けた。
 だが、その苦痛はほどなくして、消えた。腹部に深くシートベルトが食い込んだことによって破裂した内臓が、元の状態に『戻った』のである。
 ふう……。と、小夜子はようやく呼吸ができるようになった。
 うるさかった耳鳴りもようやく収まり始め、とはいえ、代わりに頭の中では警告音を鳴らしているかの如く、世界は自分の鼓動の音にのみ支配されていた。
 朦朧とする意識の中で、小夜子は首だけを動かし、車内を確認した。
 まず、小夜子の左隣に座っていた女は、助手席かBピラーのどちらかに頭から突っ込んだのか、首が後ろ方向にへし折れた状態で、窓側にもたれるようにして死んでいた。
 そのまま助手席を見てみると、茶髪の男は後ろから突っ込んできた女と、それによって変形した座席と、そしてエアバッグに挟まれ、圧死していた。
 それから小夜子は、右隣の女を見た。右隣の女は、左の女と同じくシートベルトを着用していなかったからであろうが、運転席の上に覆いかぶさるような形で、死んでいた。
 この三人よりも悲惨なことになっているのは、運転席の、短髪の男であった。
 時速七から八十キロで道路を走っていた短髪の男は、突如、急ブレーキを踏みながら、ハンドルを左に切った。車はそのままの勢いで近くの電柱に衝突し、エアバッグの作動もむなしく、短髪の男の胸から上は、もはや、人の形を成していなかった。
 小夜子は、事故の瞬間に何が起きたのかを見ていた。
 赤い服の少女であった。
 速度が速度だけに、さすがに顔は分からなかったが、黒髪の、真っ赤なワンピースドレスを着た幼い少女が、車の前を横切るように現れたのである。
 男は目の前に現れた少女に驚き、急ブレーキ、急ハンドルを切った。そして、制御ができなくなった車は、曲がった先にあった電柱に正面やや左寄りに衝突したのであった。
 四つの死体を見た小夜子は、三度、大きく深呼吸をして気を落ち着けようとした。しかし、これだけの事故があったのである。冷静になれるわけがなかった。
 そう言えば、後ろに座っているはずのタナベはどうなったのだろうか。
 小夜子はシートベルトを外し、一番後ろの席を覗いたのだが、タナベは左窓に突き刺さるようにして固まっており、ぴくりとも動かなかった。
 自分以外、一人残らず死んでいた。
 そのことを確認した小夜子は、左の扉を開け、転がるように車外に出た。
 車外では、さすがに事故の衝撃音や、凄惨な現場もあってか、まばらではあるが野次馬も集まりつつあった。だが、小夜子にとって、今はそれどころではなかった。
 小夜子はすぐに、車が向かっていた方へ、恐る恐る、ゆっくりと歩き始めた。
 二歩、三歩目で、小夜子は足を止めた。いや、止めざるを得なかった。ごつり、と頭をぶつけ、前に進むことができなくなったのである。
「……『壁』だ」
 そして、両手で目の前の、何もない空間を触った。
「……『壁』がある」
 もし、車があのまま真っ直ぐに進んでいたら……。
 小夜子は心底ぞっとした。
 ――

 七月十七日、木曜日。
 すう……、と音もなく、白い影が茜色に染まる校内の廊下を、横切った。
 誰の目にも止まることなく、誰の目にも入ることなく、それは揺らめく靄のように、あるいは蜃気楼のように、部室棟の廊下を進んでいた。
 と、ずらりと並んでいる扉の一つが開き、部屋から三人の男子生徒が出てきた。三人は帰りにどこに寄るかと話しながら、白い影のすぐ近くまでやってきたのだが、誰一人としてその存在に気づくことはなかった。
 影は、男子たちの姿が見えなくなるのを確認すると、彼らが立った今でていった扉に手を当て、扉を開けることなく部屋の中を『視』た。
 部室内では、げっそりと痩せ細った鶏に似た男子が一人、パソコンに向かっているのみで、他に人の姿は見当たらなかった。そうした部屋の様子を視た影は、唐突に、煙のように廊下から消え失せ、ほんの数瞬の内に新聞部の部室内に出現した。
 新聞部に残っていた男子は、しばらく目の前にいる白い影に気づきもせず、ひたすらにキーボードを打ち続けていたのだが、ふと、人の気配を感じて顔を上げた。
「……っ! ……ヤ、ヤナセユミ! オマエ、いつからそこに!」
 新聞部の鶏内は、悲鳴のような声をあげながらたじろいだ。
「あ? あたしがどこにいようが、てめえの知ったこっちゃねえだろ」
 腕を組み、扉のすぐ隣の壁に背を預け、夕美はぎらりと鶏内を睨みつけた。
「だ、だいたい……! 何の用があってここに来た!」
「とぼけんじゃねえぞ、このタコ。あんた、昨日あった事故を小夜子のせいにしようとしてるそうだな。こっちは朝村から全部きいてんだ」
 鶏内は息を飲み、顔をゆがませたが、すぐにいつもの下衆な笑みを夕美に向けた。
「は……。はっはあん……? つまり、あの事故はやっぱり牧原美奈子、いや、一条小夜子がやったんだな? そうと分かれば、こっちだって考えがある……! ヤナセユミ! ばらされたくなきゃなあ! オレのいうトーリに動いてもらうぞ!」
 すっ、夕美は無言で壁から離れ、足音も立てずに鶏内に近づいた。
「おっ! どうした? 何だその眼は?」
 部屋に現れた時よりも、夕美の表情はずっと冷たかった。一見すると無表情のように見えるも、だからこそ、夕美を殺意のある怒りが支配しているのが、鶏内には分かった。
「なんだ? オレをどうする気だ? はっ! どうしようとな! オレは一度書くと決めたことは、死んでも書く男だ! オマエが不利になることを、必ず書いてやるからな!」
 深く、大きなため息が一つ、夕美の口からこぼれた。
「……何か勘違いしているようだな」
「なに……?」
「あんたが何を考えてようが関係ない。どのみち、あんたは全部わすれんだからな」
「……なんだと?」
 がた、と鶏内は夕美から距離を置こうと、立ち上がって後ろに下がった。そして、夕美の動きを一つとして見逃すまいと、目を見張った。鶏内は、緊張していた。これから自分の身に起こるであろうことを想像し、あるいは恐怖さえしていた。
 対して夕美は、ゆらり、ゆらりと、やはり音もなく鶏内に近づきつつ、実に妙なことをした。右手をゆっくりと上げると、その手の平を鶏内に見せるように開いたのである。
「そうか……。オマエだな? オレの記憶を消したのは!」
 鶏内が絶叫した。外の廊下どころか、部室棟全体に響かんばかりの叫び声であった。
 瞬間、ぴたり……、と夕美は動きを止めた。
「なんのことだ……?」
「とぼけんじゃねえぞ! オマエだろ! 一条小夜子のことを調べようとするたびに! オレの記憶を消してたのは! オマエが! 何度も! 何度も! 何度も! 何度も!」
「おい、ちょっと待て。話が見えない。あんた、さっきから何を言ってんだよ」
 それでなくとも、目に作っている大きなクマと、病的なまでにこけた頬だけでも気味が悪いというのに、鶏内は唐突に、唾を飛ばしながら大きな声で叫びだし、どころか、支離滅裂な言葉を吐いた。夕美は始め、鶏内が発狂でもしたのかと思っていた。
 しかし、そうではなかった。
「話が見えない? これを! これを見てもそんなことが言えるのか!」
 叫びながら、鶏内はボタンのことも気にせず、シャツを開いて自分の体を見せた。
 まさに、骨と、皮だけの状態の、鶏内の肉体には、文字が書かれてあった。これが刺青であったなら、まだましだったかもしれない。鶏内の胸から腹にかけて、大きく『一条小夜子の正体を忘れるな』と、ナイフか何かで刻まれた生々しい傷跡があったのである。
 鶏内の体を見た夕美は、絶句した。その凄惨な姿に、口を手で覆い、眉をひそめ、狂気じみた鶏内の行動に声すらあげられないでいた。
「オレの記憶を消そうがなあ! オレが一条小夜子のことを調べてた事実は! これなら絶対に消えない! はっはっはは! オマエらのもくろみも、全部暴いてやるからな!」
「……まあ、どっちにしろ、あんたの記憶は消させてもらうけどな」
 言って、夕美は鶏内の目の前に立ち、彼の額を指先で触れた。




書下ろしです。
今回のお話は、高橋葉介先生の名作『学校怪談』を大変参考にさせていただきました。参考にした程度なので、内容は全く違いますが。私は先生が描く初期の『学校怪談』と『夢幻外伝』の時の夢幻紳士が好きなのです。

ちなみに、今回の『壁の噂』は、プロット段階では過去の事件、現在の事件、香苗たちの噂話、の三つを織り交ぜて物語を進行させる予定でしたが、あまりごちゃごちゃしすぎるのもどうかと言うことと、作品内の大前提として『三人娘が見ていない事柄は書かない』『過去と未来のことについては書かない』と言うことがあるので、今の形になりました。

そう言うわけなので、『白服怪人の噂』が初登場の下衆四人組、登場時の彼らの会話は、そのうち削除することになります。


参考までに、

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