忍者ブログ
別館
[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

今は遠き夏の日々 ~学校七不思議編 その八~

 成上村の噂

 七月二十日、日曜日。
 連休二日目、ということもあるのだろう。成上市稲穂坂町の中心地にある市立図書館では、普段よりも圧倒的に来館者が多くなっていた。とはいえ、さすがに人が入り乱れているわけでもなく、司書や職員が神経を尖らせている程度に来館者が多いだけでもある。
 この人数が、あるいはちょうどよいともいえる。三階建て、延床面積八千平方メートルの、蔵書数およそ十万冊を誇るこの成上市立中央図書館において、今の状況であれば、人を探そうと思えばまだ見つけやすくあるし、誰にも気づかれないように行動しようと思えば、全く怪しまれることなく行動することも可能だからである。
 そうした中で、朝村香苗は郷土資料が所蔵されている区画にいた。大量の本を机に積み上げ、栗毛の頭をわしゃわしゃとかき回しながら、集めた資料を睨んでいたのである。
 成上市。犬の首の噂。残飯男の噂。壁の噂。牧原美奈子の噂。都市伝説。
 くりっ、とした可愛らしい目をしていながらも、ぎりと香苗は眉間にしわを寄せた。
 夜子神社。一条小夜子。成上高校。鬼門。学校七不思議。神社。狗神。
 はあ……。と、周囲にいる人間の耳にも入る大きさで、深いため息をついた。
 そうして、うんうんと唸っていると、香苗の座っている、正面に人がやってきた。
「ここ、いいかな?」
 声を掛けられるまで、香苗は人が来たことにすら気がついていなかった。言われて初めて、慌てて頭を上げたのである。そして、香苗の目に、ほとんど白に近い金髪に、生気を一切感じさせない白い肌と、そして、青い瞳の少女の姿が飛び込んだ。
「あ、あれ? 柳瀬さん?」
 意外な人物に、意外な場所でばったり会ったことに驚きを隠せないでいた香苗は、なぜここに、と言葉を続けようとした。ところが、香苗はそうしなかった。夕美の眼が、なぜか自分の背後に向けられており、その視線の先が気になったのである。
「なんか用?」
 夕美は、なぜかやわらかい表情で、そう言って相手を威嚇した。
 一体誰と話をしているのか、と香苗は後ろを振り返った。すると、そこには黒いスーツを着た、地味な中年男性が一人いた。見覚えのない男である。
 見たこともない男が、いつの間にか背後に立っていたということも気味が悪いが、しかも、夕美に睨まれているのである。香苗は男に対して嫌悪感を抱かざるを得なかった。
 と、男はその場からそそくさと去って行った。
「え? ええ? 今の人、なに?」
「朝村は小夜子みたいに、黙ってれば顔だけはいいんだから、気をつけろよ」
「どういう意味ですか、それ……。だいたい、なんで図書館にいるんです?」
 香苗が言うと、夕美はやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
「たまにはいいだろうよ」
「しかも、この辺り全部、郷土資料の棚ですけど」
 指摘され、夕美は一瞬かたまったが、構わず香苗の前に座った。
「で……? お前はなにしてんの?」
「私は……。その……」
 さすがに、一条小夜子のことについて調べていたとは言えず、視線を手元の資料やメモからそらしながら、香苗はさりげなくそれらを隠そうとした。
「隠さなくてもいいよ。だいたい分かってるから」
 ところが、メモの内の一つ、特に書きこんでいるものを、夕美が手に取ってしまった。
「ふうん……。割とよく調べてるみたいだな。……色々、きいてもいいか?」
「へ……? ええ、それは構わないですけど」
 香苗は、きょとんとした顔で答えた。てっきり怒られたり、あるいは軽蔑されたりするものだとばかり思っていたため、夕美の反応があまりにも不思議だったのである。
 と、唐突に、二人の横で咳払いをする音が聞こえた。近くにいた年配の来館者が、先ほどからの二人の話し声に腹を立て、眉間にしわを寄せながらわざとしたのである。
「……個室、借りましょうか。資料、半分だけ持ってくれませんか?」
「いやだ」

 成上市立中央図書館の三階には、個室の並ぶ一角がある。一面だけガラス張りだが、中の声は外には全く漏れない、エアコン空調完備の、集団用の自習室である。主に、高校生や大学生の、集団で勉強をする場として作られた部屋である。
 香苗と夕美はそうした部屋のうちの一室を借りた。
「いまさら言うのもなんですけど……。もしかして、監視にきたとかですか……?」
「いいや、別に?」
 と、夕美は言うが、香苗にはどうにも夕美の行動が理解できないでいた。第一、友人のことを嗅ぎまわっている現場を見つけたのだから、さばさばしていて、物事の良し悪しにはっきりと言葉をぶつけるような夕美でなくとも、怒らないわけがない。
 香苗が夕美のことを警戒しながら様子を見ていると、夕美はふっと優しく微笑んだ。
「別に怒りゃしないって」
「そうですか? ……それならいいですけど。……それで、何をききたいんですか?」
「そうだな……。じゃあ、さっきお前のメモに書いてあったのを見たんだけど、いつか学校で見た『夜子神社』について話してくれよ」
「……『夜子神社』ですか」
「見つけたんだろう?」
 さて、どう説明したものか、と香苗は資料を漁り、頭の中を整理した。
「六月二十日……。初めて三人で噂検証をしたあの日、私たちは成上高校の美術室で『夜子神社御守護』って書かれた護符を見つけましたよね。この際、どうしてあの神社の絵を柳瀬さんが見つけることができたのかってことは、置いとくとして」
「ふむ……」
「私、あれからずっと夜子神社のことが気になっていたんです。あの赤い開かずの間を封じることができるんですから、きっと有名で、力のある神社なんだろうって思ってましたから。……だけど、全国どこを探しても、同じ名前の神社は見つからないし、少なくとも今の成上市には夜子神社なんて存在してないんです」
「……『今の』ってことは、やっぱり見つけたんだな?」
 頷いてから、香苗はいくつかの資料を広げた。
「これは、慶長十年、西暦一六〇五年の、この辺りの地図なんですけど、この当時、成上市の元になった『成上村』に『夜子神社』は実在していたんです」
 言って、成上市近辺の歴史について詳しく取り扱った資料の、見開きページを広げた。すると、確かに『成上村』の中に『夜子神社』の記載がされていた。
「慶長十年っつったら、関ヶ原の五年後の地図か」
「成上村の村長の家を中心にして、北西にある『美遥山』っていう小さな山。ほら、成上高校の、教室の窓からも見えるあの山です。あそこの上に夜子神社は確かにあったそうですよ。……それでですね。この神社、ちょっといわくつきと言うか」
「ほう……。いわくつき……」
「さっき、関ヶ原の五年後って言いましたよね。そこが重要なんです」
 と、香苗は別の、紐で綴じられた古い和本を出した。
「これ、成上女子大にある図書館の書庫からくすねてきたんですけど」
「お前……。よくやるな、そんなこと」
「どの郷土資料や資料館でも手に入らなかった、成上村の成り立ちについて書かれてある古書です。これによると、成上村は元々『稲穂坂村』っていう名前だったらしいんですけど、ある事件を境に『成上村』に改名することになったそうです」
 香苗は、あまり粗末に扱うと破れてしまいそうなほどに古い本をめくった。そうして説明するために開いた項目には、古文の授業でも出ないような難しい文字が並んでいた。
「その事件っていうのが、慶長七年、野盗による稲穂坂村の襲撃です。――関ヶ原の影響で浪人が増えて、っていう流れで襲われたのかは分からないですけど――。とにかく、稲穂坂村の人たちは野盗に立ち向かうために呪術を使ったんです」
「呪術って……、現実的じゃないなあ」
「その呪術っていうのが。……『狗神降ろし』です」
「いぬがみおろし……?」
「私も、この本を完璧に解読できるほど古い字に強いわけじゃないですけど、ほら。野盗の群れに対抗するために……、ええと、村の呪術師による狗神降ろしをしたって。その方法が、犬を、首だけが出るように生き埋めにして、その眼の前に餌を置く。犬が餓死する寸前になった時に首を斬り落として、術者に怨念を憑りつかせるっていうものです」
「おい、それってもしかして……」
「そうです。あのいかれた連続犬殺しの犯人がやったのと、同じ方法です」
「しかし、分からんな。それだと犬を殺した術者の方が死ぬんじゃねえの? 現に、あの犯人は電車にはねられて死んだあげく、最近じゃあの辺りで人面犬が出るって噂だし」
「それは、あの犯人が術を完成させられなかったからですよ。それに、稲穂坂村を守るために呪術師が殺したのは、自分の愛犬だったそうです。殺された犬は人間に裏切られたっていう激しい恨みと怒りで怨霊化して、だけど、それでも敬愛する主人を裏切ることができない気持ちから、術者に憑りつきながらも、術者を守るんだそうです」
 言いながら、あまりにも香苗はやるせない気持ちになった。当時と今とではあまりにも物の考え方が違うせいもあって、その齟齬が香苗の心を揺さぶったのである。
「とにかく、この呪術を使って野盗を皆殺しにしたそうです。ただ、問題が残って……」
 と、香苗は同じ古書をぱらぱらとめくっていった。
「死んだ犬の首から流れた血で村の大地が呪われ、殺された恨みで疫病が流行ったそうです。この血を洗い、犬の呪いと怨念を鎮めるため、術者は犬の胴と首を抱えて、自分から美遥山の頂上で生き埋めになったんですって。村の人たちは呪術師と犬の両方を鎮めるために、呪術者の名前の神社を建てたそうです。それが『夜子神社』です。そして、神様になった人間がいたから『神に成った』と。そこから転じて『成上』になったそうです」
「はあ……。なるほどなあ……」
 と、夕美が感嘆のこもったため息をこぼした。いや、実際、これだけのことを、よく調べ上げられたものである。去年まで中学生だった高校生にしては大したものであった。しかも、香苗の話は説得力がある。夕美はただただ感心するばかりであった。
「話には続きがあってですね」
「なに? まだあんのか?」
「話はここからですよ。こっちは江戸時代の成上の地図です……」
 ページをめくり、文政七年、西暦一八二四年の地図を広げた。
「結構、時代が飛んじゃってますけど、この頃になると、ほら。成上村の周辺に十も神社ができているんです。狭い範囲に神社やお寺が並ぶのって、日本中の地図を見てみると結構あるもんなんですけど、一つの村に十もの神社があるのって珍しくて」
「そりゃそうだろうな。そもそも、なんでそんなに神社が必要なんだか」
「一つ一つの神社には、それぞれ役割があるみたいで、そこはまだ詳しく調べられてないですけど。これ、みんな夜子神社の神様を鎮めるために建てみたいです」
「ふうん……。そこまでして鎮めようとするって、……封印しようとしてるみたいだな」
「……気づきましたか?」
「ん……? 何が?」
 きょとんとする夕美に構わず、香苗は今年発行の成上市の地図を広げた。
「いいですか? これが今の成上市です。成上市の中でも、成上村だった場所の範囲が、これ……。現存してない神社がいくつかありますが、それらがあった場所が、ここ……」
 香苗は地図にいくつかの印をつけた。まず、成上市南成上町を中心に大きな円を描くように、成上村だった範囲に線を引いていき、それから夜子神社以外の、夜子神社にまつわる神社のある場所と、かつて神社があった場所に印をつけていった。
「現存している神社は、成上町新興住宅地にある『犬の杜』と、そのほぼ真南にある南成上町、線路沿いの『陽野見神社』と、それから、稲穂坂町にある『稲穂神社』……。西の工業地区手前にある『西稲穂神社』と。そして、西成上町の『囲裏見神社』の五つ」
「ちょっと待て。この場所って」
 食い入るように地図を見ながら、夕美は神社がなくなっている場所を指差した。
「そうです。神社が取り壊された場所は、例外なく妙な噂が立っています。成上町の『迷い通りの噂』に、旧成上工業団地の『人喰い団地の噂』……。それから、ついこのあいだ調べに行った新成上団地の『赤い電話ボックスの噂』と、いつまでたっても中止された工事が再開しない、商業地区南の『建設中のデパート』……。そして『成上高校』……」
 これで、十ある神社の場所は全てである。興味深いことは、もう一つあった。
「犬殺しの犯人は、たぶん、かなり核心をついていたんですよ。あの犯人が犬の首を晒した場所を調べたら、実はどれも神社の近くですし。――しかも、それだけじゃなくてですね? 南から西にかけての商業地区や工業地区、工業団地は、市の発展のためにって無理やり開発がすすめられて、次々と神社を取り壊したんですけど、工事中にかなりの人が死んでるんです。まだ建設中の大型デパートでも、この間、人が死んだばかりでしょ?」
「だけど、必ずしも祟りがあるとも思えないんだが……」
「もちろん、それも考えました。私だって、祟りがあるなんて本気で信じてるわけじゃないですからね。……まあ、日本人ならみんな祟りを畏れるように、私も恐いですけど」
「それで……?」
「ヒントになったのは、やっぱり犬殺しの犯人です。あの男のやったことは心底胸糞悪いですけど、今考えてみると、あの男の言った言葉の中には重要なことが多いです」
 香苗は、鞄から新聞の切り抜きを、何枚も何枚も出して机に広げた。もはや、机の上はごちゃごちゃしているどころではなく、しかし、香苗の話は続けられた。
「工事中の事故や不審死。これって、どうして事故が起きたのかとか、他殺の可能性だってあるのに、ほとんど何も捜査もされずに終わってるんです。……ってことは、工事の邪魔をしようとしてる誰かがいるってことですよね?」
「ううむ……。さすがにそれは突拍子もなさすぎる気がするが……」
「それは、もちろんです。例えばほら、前に白服のおじいさんを追いかけてた時に、私たちに襲ってきたパジャマの男がいたでしょ? あの人って、建設中の大型デパートの、デザインや設計に携わってた人らしいんです。だけど、どうしてあの人が狂ったのかとか、さすがに私にはそこまで説明できるわけじゃないです。重要なのは、別の事ですよ」
「と、言うと……?」
「成上村の神社がなくなると、都合の悪い人たちがいるってことです」
「どうして?」
「さっき、柳瀬さんが言ったじゃないですか。……まるで、封印しようとしているみたいだ、って。……たぶん、本当に封印されているですよ。封印しなきゃいけないぐらいに、狗神様や夜子っていう呪術師の霊が危ないんです。きっと」
「まあ、その土地ながらの景色や景観を壊すのに反対する人は、やっぱいるだろうしな」
「だけど一方で、神社の封印を解こうとしている人もいるっぽいんです」
 そう言って、香苗は今まで使っていたのとは別の色のペンを手に取り、地図に新しい印をつけていった。しかも、その印はどれも、成上村の範囲外であった。
「まず、私たち二人で行った『魔の横断歩道の噂』が、ここ。数年前にあった稲穂坂町での『潰れた女性の変死体』事件現場。……『犬の首事件』で犯人が撥ねられた踏切」
 夕美は始め、その印の意味に気がつかなかった。一見して分かることは、全て、成上村の範囲外か、あるいは境界線のぎりぎりにあるということである。不思議そうにする夕美を見て、香苗は難しい顔をした。言うべきか、言わざるべきか、判断に迷ったのである。
「……それで、ここが、この間あった交通事故の現場。ここは、一条さんが参加しなかった噂検証の現場。こっちは、用事があるって一条さんが途中で引き返した場所」
 夕美は、香苗が印をつけ終わるまで黙っていた。香苗の言いたいことを察したからに他ならないが、香苗は香苗で、そうした夕美の気持ちに気づいていながらも、話を続けた。
「小夜子は……、小夜子が成上村から外に出られない……、と?」
 そして、夕美は言った。あるいは怒り狂うのではないだろうかと香苗が身構えていたのに反して、夕美の表情は真剣そのもので、実に冷静であった。
「稲穂坂町のOL変死体。この被害者の名前が『一条静夜(しずよ)』なんです……」
 重たく、分厚い縮刷版の新聞の、しおりを挟んでいるページを香苗は開いた。香苗が開いたページには、確かに同事故の被害者に、その名前が書かれてあった。
「成上市で有名な『一条家の噂』って、知ってます?」
「……さあ。人の名前のこと、そんなに気にしたことがないし」
「私は隣町に住んでるからか、成上高校に通い始めるまで知らなかったんですけど。かなり有名みたいです。一条家の人間に近づくと不幸になる……って」
「そういや、そんなことを小夜子は中学の時から言われてたな。だけどそれって、都市伝説とかってより、普通にいじめや差別なんじゃねえの?」
「と言うより、一条家が昔やったことが原因なんです。柳瀬さんは頭いいから、もう感づいているでしょうけど、戦国時代に狗神降ろしをした呪術師が、一条の人間なんです」
 そう言うと、香苗は初めに出した資料、成上の歴史について書かれた古書を開いた。
「狗神降ろしをした呪術師の一族は、その後、祟り神である狗神を鎮め続けなければならなくなったそうです。……『イぬのチをジょうか』させ続ける。だから『一条』って呼ぶんです。問題は、一条家が狗神を鎮めつつも、狗神の恩恵を受け続けていることです」
 言って、香苗は山積みになっている資料の中から、一冊の本を掘り出した。日本の陰陽術や呪術、妖術について扱った本と、神道を詳しく説明している本である。
「そもそも狗神っていうのは、一般的にみんなが考えてるような神様じゃないんです。祟神として人を祟ることもあるんですけど、最も特徴的なのは、一族の子孫全員に憑くっていうところです。憑いた家に富をもたらし、同時に他人に不幸もまく。……だから、憑きもの筋の人間は、迫害されたり、差別されたりするそうです」
「ふうん……」
「それで、ううむ……。こっからは、私の憶測がだいぶ入っちゃうんですけど」
 ぽりぽりと頭をかき、香苗は大きく深呼吸をした。
「都市開発や神社の取り壊し阻止をしていて、それで夜子神社にかけられた封印、成上市の結界を守ろうとしているのが『一条家』なんだろうっていうのは、たぶん、合ってます」
「まあ、普通に考えればそうだろうな」
「逆に、成上の結界を解こうとしている側にいるのが一条さん」
「根拠は……?」
「これです」
 香苗は二枚の写真を出した。二枚とも、六月二十日の学校探検で見つけた護符である。
「こっちは発見した時、撮った写真……。それでこっちが、後日改めて撮った写真です」
「同じ護符だろ?」
「よく見てください。微妙に字も絵も違います。全く同じ護符じゃあないんです」
 そう言われてみると、確かにそのようにも思える。と、夕美は写真を睨んだ。
「あの時、お札を剥がしたのは私です。霊能力のある柳瀬さんでも、一条さん自身でもなく。しかも、私にお札を剥がすように促したのも一条さんです。そして、その後でお札を持っていたのも、お札を元の位置に戻そうとしたのも、一条さんです」
「仮にお前の憶測が合ってたとして、だけど、動機は何だよ」
「そうですねえ……。たぶん、一条さんは単純に村の外に出たいってことなんでしょうけど。結界がなくなって、夜子神社の封印が弱まって、一番得をするのってそこに封印されている狗神でしょ? もしかしたら、一条さん自身、知らず知らずのうちに利用されているとか……。ってところまで考えてたんですけど、考えすぎですかね?」
「考えすぎか、そうでないかで言われたら、考えすぎだろって思うな」
 やっぱり? と言いながらも、香苗は少し、残念そうにした。
PR
コメントを投稿する

HN
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリー

スポンサードリンク

最新コメント

[02/01 シーラ B]
[02/01 さと]
[01/23 シーラ B]
[01/23 さと]
[01/19 シーラ B]
最新トラックバック

プロフィール

HN:
シーラさん
性別:
非公開
バーコード

ブログ内検索

P R