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今は遠き夏の日々 ~学校七不思議編 その三~

 その三・新聞部

『ほんとかどうか、これ、調べてみようぜ。アタシは気になる』

「ふうむ……。後は、二人がいつ学校に行くか、なんだけどなあ……」

 ボイスレコーダーを再生させた香苗は、さて、どうしたものか、と腕を組んだ。

 香苗がペンケースの中に小型のボイスレコーダーを忍ばせていたのは、もともと柳瀬夕美を狙っていたからに他ならない。

「おうおう、朝村。面白そうなことしてるじゃないか」
 と、香苗は背後から聞こえた声に驚き、振り返った。すると、そこには痩せこけて顔色の悪くなっている男子生徒が、にたにたといやらしい顔つきをして立っていた。

「せ、先輩……! いるならいるって言ってくださいよ」

 言って、香苗は録音機をポケットに入れた。

 香苗は、同じ新聞部の部員であるとはいえ、この先輩が苦手であった。捏造記事や中傷記事ばかりを好んで書くということもあるが、自分以外の人間を見下した態度や、人を小ばかにした目つきが、何よりも気に入らなかったのである。

「どうでもいいけどよ。朝村。お前、牧原と柳瀬にちょっかいだそうとしてんのか? 気を付けた方がいいぞ? あの二人、何か妙な秘密を持ってるぜ?」

「別にちょっかいとか……。私はそんなんじゃ。……だいたい、私の担当はオカルトや超常現象の記事ですよ? 先輩みたいにスキャンダルを探してるわけじゃないんです」

「言うじゃねえか」

 一歩、先輩は前に出て、ぐっ、顔を近づけてきた。さすがに年上の男と言うこともあり、香苗はそれだけで緊張してしまった。

 そんな香苗を見てか、先輩は小さく笑うと、姿勢を正した。

「まあ、いい。朝村。そのボイスレコーダー、貸せ」

 一瞬、香苗には目の前の男が何を言っているのか、理解できなかった。

「……はい? えっと、……なんで?」

「さっき言ったろ? 『面白そうなことしてるじゃないか』ってよ」

「……だから、なんです?」

「お前じゃ力不足だっつってんだよ。今まではそんなに気にしたことなかったけどよ。俺があの二人の秘密を暴いてやる。だからそのレコーダーをよこせって言ってんだ」

 と、先輩は右手をずいと出した。

 その手を見た香苗は、先輩の顔を見上げた。そして、それから視線をそらしつつポケットから録音機を取り出し、先輩に渡した。

「よしよし……。……ん?」

「……」

 レコーダーは、いくら再生しようとしても、すでに中身は空であった。

「お前……! 消したのか! 何やってんだよ!」

「私はあの二人を陥れようとか、そんなこと考えてないからですよ」

 言って、香苗は部室の机の上に広げていた資料をかき集め、部屋から飛び出していった。



 部室から逃げ出した後、香苗はポケットからもう一つ、ボイスレコーダーを取り出した。

『でも、音楽室のピアニストって言ったら、あれだよね。成上校の有名な七不思議の一つだよね』

『そうなんだよ。それもあって面白そうだと思ってよ。だから、どうせなら肝試しがてら、夜中に行こうぜ』

『いつ行く?』

『今晩の十一時、校門前で集合な』

「今日の夜……。十一時か……」

 録音機の電源を切ると、香苗は歩きながらぼそりと呟いた。

 先輩に渡したのは、同じ型の、しかし中身の入っていない録音機であった。




 一度、自宅まで戻って支度を整えた香苗は、学校まで戻り、物陰から校門の様子を探っていた。

 夜の学校である。当然ながら明かりは一つもついておらず、人の気配など全くない。

 腕時計を見ると、時刻は午後十時五十分。少し早めの到着だが、二人が来るのを待つには十分である。後は、柳瀬夕美たちが現れ、学校の中に忍び込むのを待つだけである。

 そうして、暗がりの中で身をひそめていた時であった。

「あれ? 思ったより早いのな」

 唐突に、背後から声が聞こえてきた。

 慌てて振り返ると、柳瀬夕美と牧原美奈子の二人がそこに立っていた。

「え? ど、どうして?」

「ボイスレコーダーに吹き込んだことな。あれ。お前を誘い出すための罠だよ」

 顔からさあと血の気が引いたのにも気づかないまでに、香苗は狼狽した。

「いつ、気がついたんですか……?」

「ごめん。ペンケースの中身、見させてもらっちゃった」

 てへっ。と、笑いながら、牧原美奈子は悪びれもせずに言った。

「な、牧原さん、勝手に人の筆箱開けたんですか?」

「さっちゃんだよー」

 この人は本当に見た目と中身のギャップが激しくてつかみにくい。

「ところで、アサさんとかさん」

 言って、びしりと牧原美奈子は香苗を指差した。

「……朝村です」

「そうそう。朝村香苗ちゃん。隣のクラスの。新聞部に所属してるんだってね。しかもオカルト系の記事ばっかり書いてるらしいじゃない?」

 はっきりと、よく通る声で、牧原美奈子は続けた。彼女の言葉に、香苗は内心、どきりとした。

「し……、調べたんですか……。私のことも」

「とーぜんだろ。ボイスレコーダー仕込むような人間だ。信用ならねえ」

 吐き捨てるように言うと、夕美は腕を組んで、香苗を睨みつけた。

「まあまあ、夕美ちゃん。そう言わないの」

 そんな夕美を、牧原美奈子はなだめた。おそらく、彼女がいなければ、香苗は今頃、夕美にチクチクと嫌味を言われ続けたことだろう。香苗はそう確信していた。

「……しかし、分からんな。レコーダーのことは抜きにしても、なんでアタシらにこの話を持ってきたんだよ」

 と、先ほどよりかはいくらか口調を和らげつつ、夕美は言った。とはいえ、それでも今の香苗にとってみれば、きつく当たられているような気がしてならないほどの言い方である。

「なんでオカルト研究部の連中に頼まない? あそこにゃ、自称霊能者がいるじゃないか」

「それは……」

 どうするか? すべてを打ち明けるか?

 今、柳瀬さんは完全に私のことを怪しんでいる。新聞部にいることも拍車をかけているのだろうし、おそらく、写真の束を使って『試した』ことも後を引いているのだろう。

 香苗は、僅か二、三秒ほどのこの間に、自分でも驚くほど頭を回転させた。すると、

「ここで言ってても仕方がないか……。とりあえず、中に入ろうぜ」

 香苗が何かを言う前に、夕美がくいと親指で学校を指しながら言った。

「え、え? 行くって?」

 動揺して、ほとんどまともに思考できていない香苗に構わず、夕美は暗がりでも目立つ髪を揺らしながら、歩き始めた。そして、牧原、もとい、一条小夜子も彼女に続いた。

「どこって、そりゃあんた。学校に決まってるだろ」

「ほら、行こうよ!」

 そして、夕美は不思議そうな顔をして、小夜子は手招きをしながら言った。

「私も、行っていいんですか?」

「あ? あんた、音楽室の幽霊の噂を確かめに来たんじゃねえの? 新聞のネタのためにさ」

 なるほど、そう考えてくれているのか。と、香苗は小さく安堵した。









大幅改稿
投稿するために泣く泣くカットした新聞部との絡みを復活させてみた
ただし、元の原稿ではカットした後で保存してしまってるので
今回はほとんど新規に書き直し

そして、今回でようやく序章が終わりと言ったところか
次回からはいよいよ学校七不思議編が始まる感じ

むしろ、ここまでを序章としてもよかったかもね
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