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今は遠き夏の日々 ~学校七不思議編 その一~

 その一・朝村香苗


 ねえ、集団自殺があった中学校の話、聞いた?

 知ってる。自殺の前にこっくりさんやってたらしいよ。

 しかも、自殺っていうか、変な死に方したらしいね。

 それって、商店街に出た不審者と同じ?

 そうそう。商店街の路地裏で生ごみあさってる男とおんなじ。

 商店街っていえば、駅前通りの建設中のデパート。また工事中止だって。

 また? 最近この学校にも変な話あるのに、ここんとこ、こういう話って多いよね。

 ああ、夜の音楽室に出るって噂のことでしょ?

「え? なにそれ。初耳なんだけど」

 肩にかかるほどの栗毛と、少々幼く見える顔立ちの彼女は、興味深そうに眼を輝かせた。まるでおもちゃを見つけた子犬がするかのような眼であるが、低めの身長と人懐こい性格もあって、その場にいた女子たちは本当に子犬を見るような目で彼女を見た。

「あれ? カナが知らないことがあるなんて、めずらしいね」

 そのうちの一人が意地悪そうな顔をしたことに構わず、朝村香苗(あさむらかなえ)はぼろぼろの手帳と、ちいさくなった鉛筆を取り出した。

「それで、どういう話?」

「こないだ三組の何人かが夜の学校で肝試ししたらしくってね。見たんだって、幽霊。しかも、写真まで撮ったらしいよ。撮った本人は『なぜか』風邪で休んでるけど」

 ふうん、と香苗は話を聞きながら、写真を撮ったという男子の名前をメモした。

「でもその写真見たことあるけど、ぜんぜん心霊写真っぽくないんだよねー」

「そういうのって、やっぱり一組のあの人なら分かるのかね」

「柳瀬夕美?」

 と、二三人が、顔を見合わせながら、同時に声を上げた。

「そうそう。あの人、霊感があるって噂じゃない?」

 それは私も聞いたことがある、と香苗は話を聞きながらメモを続けた。

「じゃあ、誰か三組の男子が撮った写真を持っていけばいいんじゃない?」

「やだよ。あの人コワイじゃん。人殺してそうだし。絶対別の星から来た宇宙人だよ」

 笑いながら、実に他愛もない話をする女子の群れの中で、しかし朝村香苗だけは、真剣に話を聞いていた。いや、そもそもこうした話をメモまでしているのは、当然ながら香苗だけであり、それは噂話を熱心に集める必要があったからである。
 六月二十日。
 その日の午前の授業を終えると、香苗はクラスの友達のところや、購買ではなく、隣のクラスへと向かった。それも、学校で最も浮いている女子生徒の目の前である。

「や、柳瀬さーん……」

 香苗はびくびくしながらも、昼休みになったというのに机に伏せて眠っている、一人の女子に話しかけた。すると、柳瀬夕美(やなせゆみ)と言う名のその女子生徒は、寝起きだからか、ずいぶんと不機嫌そうな目で、香苗を睨んできた。

 柳瀬夕美は、この成上(なるかみ)高校では、ちょっとした有名人であった。

 まず彼女は、人の目を引く格好をしている。指輪やネックレスを身に着けて、夏場でも脱ぐことのない緑色のパーカーをブラウスの上に羽織り、四六時中イヤホンを耳に差しっぱなしと、校則違反のオンパレードな格好をしていた。

 それだけでもずいぶんと目立つのだが、そうした服装よりも、むしろ本人の容姿の方が人を寄せつけないようなものであった。というのも、柳瀬夕美は、色白と言うよりは、生気すら感じさせないような、月白色の肌をしており、髪はあごのラインを僅かに隠す程度の長さに切りそろえられた、ほとんど白いに近い金のおかっぱなのである。

 そして、その柳瀬夕美は何も言わず、ただじっとこちらを見つめてきた。その瞳の色は青く、いや、青いというよりかは、灰色のかかった青で、その眼で見つめられると、香苗は蛇に睨まれたように動けなくなってしまった。

「……あんた、誰?」

 ようやく口を動かすと、柳瀬夕美は冷たい口調で、それだけ言った。

「と、隣のクラスの、朝村香苗って言うんですけど……」

「ふうん……。それで、なんか用? 下らない話だったら聞かないよ。めんどくさい」

 もう一つ、彼女を有名人たらしめることがあった。それは、その口の悪さと、態度の悪さである。柳瀬夕美は、教師ですら近づこうとしないような女として有名なのであった。

「あ、あの。ちょっと見てもらいたいものがあって」

 そんな女を前にして、香苗は怯みながらも、持ってきた鞄に手を入れた。

「見てもらいたいものだあ?」

 すごむ柳瀬夕美に構わず、香苗は鞄から封筒とペンケースを取り出した。そして、封筒の中から束ねられた数枚の写真を出すと、それを夕美の机の上に置いた。

「え……、っと。心霊写真……。なんですけど……」

 香苗は声を落としつつ言った。

 夕美が恐いからではない。彼女の目つきが、明らかに変わったからである。

「心霊写真、ねえ……」

 封筒から取り出した写真のうち、一枚を手に取ると、夕美は頬杖を突きながら眺めた。

「なんでこんな気味の悪いものを持ってくるかねえ……」

「柳瀬さんが、心霊とか、詳しいって聞いたから」

「こういうのは、さよ……。ミナコにきいた方がいいんじゃないの?」

「牧原さんのこと?」

 牧原美奈子(まきはらみなこ)と言えば、柳瀬夕美とは違った意味で有名な女子である。

「そうそう。マキハラさん。あの人ならこういうのに詳しいと思うよ」

「呼んだ?」

 と、一体どこから出てきたのか、いつの間にか香苗の背後に牧原美奈子が立っていた。
 後頭部で束ねても肩にかかるほど長い、綺麗でつやのある黒髪。きりとした眉に、夜空色に輝く瞳と、端正な顔立ち。そして、高い身長と出るところがしっかりと出た完璧なプロポーション。男女ともに、誰もが羨み、憧れるような美人であるが、同時に、牧原美奈子は凛然としていて近寄りがたい雰囲気を纏っていた。

「いや、なんかこれ見てほしーって」

「心霊写真? おもしろーい! なになに? これ誰が撮ったの?」

 であるが、話してみると、見た目のわりに、年頃の女子高生らしく子供っぽくあった。

「誰がっていうか、学校中から集まった心霊写真なんですけど」

「よくもまあ、そんなに集めたもんだ。で、先生。いかがですかね?」

 ふっと、柳瀬夕美がその視線を牧原美奈子の方へと移し、冗談めかして言った。

「結論から言うと、これは全部ニセモノですね」

 あごに手を当て、老人のような声色を作り、牧原美奈子は答えた。

「え? もしかして、霊感があるのって牧原さんの方?」

「はっはっはっ。何をおっしゃいますか、たぬきさん」

 中年男性がそうするように腰に手を当て、牧原美奈子は豪快に笑った。

「わたしに霊感なんてないわよう」

「はあ……? え? じゃあなんでニセモノって断言できるんですか?」

「その前に一つ……。わたしを牧原美奈子と呼ぶべからず……」

 言いながら、牧原美奈子は人差し指を立てながら、ちっちっちっ、と舌打ちをした。

「わたしのことは、一条小夜子(いちじょうさよこ)と呼びなさい」

 子供っぽいというより、少し頭の痛い子かもしれない、と香苗は真顔で思った。

「じゃあ、イチジョウさん……」

「さっちゃんでもいいよ」

「呼び方なんでどうでもいいからよ。さっさと写真の種明かししてやれよ、小夜子」

 と、柳瀬夕美が催促した。

「簡単に言うと、大抵の心霊写真っていうのは、作られたものか、事故かのどっちかなのよ。たとえば、そうね、腕が消えてるとか、足が消えてるとか、そういうのはわたしでも作れるわ」

「じゃあ、事故っていうのは?」

「体が透けてるとか、そういうの。だいたいカメラの問題だよ。詳しいことは写真部の人に聞いてごらんよ。心霊写真の専門家は霊媒師じゃなくて、やっぱり写真家だからね」

「そうですね。ありがとう、牧原さん」

「さっちゃんだよ」

「……さ、さっちゃんさん」















本来なら
小説は書いた小説をアップロードするように立ち上げた別館の方に載せるべきだけど
管理するのが面倒になったからこちらで上げることにする
別館が死んだら別館に置いてるものもこっちに移住させるつもりでもいるけど

いかんせん
ここはそもそも小説を上げることは考慮していないから
たぶん、相当読みづらいと思う

それはそれとして
今回のタイトル『今は遠き夏の日々』は
2012年8月から執筆し始め、同年9月に投稿した(落ちたけどwww
いわゆる「学校怪談」もの

構想自体はかなり前からあった

元々、映画『学校の怪談2』や漫画『地獄先生ぬ~べ~』、ドラマ『世にも奇妙な物語』が好きだったし
高橋葉介先生の『夢幻紳士シリーズ』『学校怪談』がやたら気に入ったりと
「学校怪談」ものはいつか書いてみたいと考えていた

そこに来ての『トワイライトシンドローム』『夕闇通り探検隊』のseason of twilightシリーズ
ええ。多大に影響を受けました。

今回は、この物語の前身である作品(10時12分の五重奏)から登場している
一条小夜子・柳瀬夕美コンビと
さらに新規で三人目の主人公である朝村香苗を追加して物語が進行するというもの

女子高生三人で学校の怪談話を検証しようっていうんだから
『トワイライトシンドローム』の影響が目に見える状態
特に出だしの部分なんか、影響受けまくり

とはいえ、少なくとも五重奏の時よりかは
三人の背景や性格、その他もろもろが掘り下げてあるから
あまりキャラが薄いなんてことにはなっていない、はず……


投稿した時は、『学校七不思議編』『都市伝説編』『おかあさん編』『朝村香苗編』の全四編構成
これを150ページ以内に収めたのだから、当時の私は頭がおかしいとしか思えない

ともかくとして、この『学校七不思議編』は
書いている時かなりノリノリだった分、私が最も好きな物語となっている
他の編と違って、書き直そうにも書き直しづらい状態になっているほど
だから、『学校七不思議編』だけは、自信を持って面白い話だと言い切ります

最近はとある事情で書く元気がなかったから中々キーボードを打てなくなってたけど
物語を補完する『学校怪談編』を書きたいと思っている
今回の小説は毎週日曜日の夜にあげるつもりだから
全部あげ終わる前には書き上げないといけないわけだけど

そんな感じ
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